民法 - 代理(2)双方代理、自己契約等【5分で1点UP】

前回の記事に引き続き、通常の代理についての問題点を整理していきましょう。今回は、代理行為と行為能力、双方代理、自己契約、復代理の論点を紹介していきます。

代理行為に行為能力は必要?

過去問(H21-2-2)

Bが自らを「売主Aの代理人B」と表示して買主Dとの間で締結した売買契約について、Bが未成年であったとしても、AはBが未成年であることを理由に取り消すことはできない。

答え:宅建過去問答え
代理人は行為能力者でなくてもよいので、Aは、Bが未成年者であったとしても、そのことを理由にDとの売買契約を取り消すことはできません。

任意代理人は、行為能力者である必要はないとされています。したがって、制限行為能力者が代理人として契約を結んだとしても代理行為は有効に成立します。

例えば、Aさんが、Cさんへのパソコン売却の代理を12歳のBさんに依頼しても、AさんとCさんの間に契約の効力が生じます。契約が有効に成立しているのですから、Bさんに行為能力がないことを理由として契約を取り消すことはできません。

代理人12歳

双方代理、自己契約とは?その効果とは?

過去問(H24-2-3)

不動産の売買契約に関して、同一人物が売主及び買主の双方の代理人となった場合であっても、売主及び買主の双方があらかじめ承諾をしているときには、当該売買契約の効果は両当事者に有効に帰属する。

答え:宅建過去問答え
原則として、同一人が売主と買主の代理人になることはできない(双方代理の禁止)。しかし、「本人があらかじめ許諾している場合」と「債務の履行」については当事者双方の代理人になることができる(108条)。したがって、本肢の記述は正しい。

自己契約とは、自分が代理人であると同時に契約の相手方となることをいいます。

自己契約

例えば、Aさんが所有する不動産の売却をBさんに依頼した場合、代理人のBさんが自ら買主になることができれば、Aさんの土地を安い値段で自分に売ってしまう契約を結ぶことができ、Aさんの利益を害する危険性があります。このようなことを防ぐために、原則として、自己契約は禁止されています。

双方代理

双方代理とは、Bさんが、Aさんの依頼を受けてAさんの代理人となると同時に、契約の相手方であるCさんの代理人にもなる場合をいいます。もし、双方代理が許されれば、Bさんの気持ちひとつで、Aさん、Cさんのいずれか一方に得をさせることができます。反対にいえば、Bさんの気持ちひとつで他方に損をさせることになりますので、原則として、双方代理は禁止されています。

自己契約も双方代理も原則として認められません。これらを行った場合は本人に効果が帰属せず、無権代理行為となります。なお、本人の事前承諾や追認があれば有効になります。

復代理とは?復代理の選任は自由にできる?

過去問(H19-2-1)

Aは不動産の売却を妻の父であるBに委任し、売却に関する代理権をBに付与した。Bは、やむを得ない事由があるときは、Aの許諾を得なくとも、復代理人を選任することができる。

答え:宅建過去問答え
原則として、任意代理人は、復代理人を選任することができませんが、「本人の許諾を得たとき」または「やむを得ない事由があるとき」には選任が可能です。したがって、本問のBは復代理人の選任をすることができます。

代理人が、ある者をさらに代理人として選任し、その代理権限内の代理行為を行わせることを復代理といいます。そして、この代理人によって選任された代理人を復代理人といいます。

たとえば、Aさんに不動産の売却を依頼されたBさんが、この依頼をさらにDさんに依頼するような場合です(この場合のDさんを復代理人といいます。)。そして、復代理人のDさんが、Aさんのために相手方Cさんと売買契約をすると契約の効力はAさんに生じます。

復代理

法定代理人はいつでも復代理人を選任することができますが、任意代理の場合、本人は代理人を信頼して依頼をしているはずであり、代理人自らが代理行為をすべきであるため、原則として復代理人の選任はできません。そこで、任意代理人は、本人の許諾があるとき、またはやむを得ない事情のあるときに限って復代理人を選任することができます。