法令上の制限 - 農地法【5分で1点UP】
農地法の問題は、毎年必ず出題されています。どのような土地のことを農地法上の「農地」というのか、どのようなことをする場合に許可がいるのか、といった内容の問題が出題の主力です。
農地法は、食料自給のため、農地などを維持しておこうという日本の農業生産力を保つための法律です。そのため、農地等の処分の制限を主な手段とします。簡単に言うと、農地は日本の生産力に関わる大切なものだから、農地を誰かに処分したり、農地を農地以外のものにしてしまう場合には許可を得てね、という法律です。
登記簿上の地目が山林となっている土地であっても,現に耕作の目的に供されている場合には、法に規定する農地に該当する。
農地法上の農地に当たるか否かは,客観的な事実状態で判断し,登記簿上の地目は関係がありません。現に耕作の目的に供されている場合には,農地法に規定する農地に該当する(農地法2条1項)。
土地が農地にあたるかは、土地の客観的な事実状態で判断されます。現に肥料を施し、農作物を作っているような土地を農地といい、登記簿上の地目が、「田」や「畑」になっているかどうかは関係ありません。
では、具体的にどのようなことをする場合に許可が必要になるのでしょうか。許可は大きく分けて、農地を譲渡等する場合の3条許可、農地を農地以外の土地に転用する場合の4条許可、農地を転用目的で譲渡等する場合の5条許可の3つに分かれます。
そして、農地法は、この3条4条5条の許可制度からの出題がほとんどですのでしっかり押さえましょう。
農地法3条許可(権利移動)
権利移動とは、農地を農地として譲渡することをいいます。農地が無秩序に耕作する意思のない者によって取得されてしまったりすると、日本の農業生産力に与える影響が大きいため、一定の規制を設け、譲渡等に許可が必要だとしています。
たとえば、長年農家を営んでいたAさんには跡継ぎがいないため、近所で農家を営んでいるBさんに農地を売ることにしました。このBさんへの農地の譲渡に農業委員会の許可(3条許可)が必要になります。
農業者が住宅の改築に必要な資金を銀行から借りるため、自己所有の農地に抵当権を設定する場合には、法第3条第1項の許可を受けなければならない。
自己所有の農地に抵当権を設定する場合には、3条1項の許可は不要です。
また、所有権の移転に限らず、地上権などの設定をする場合にも許可が必要になりますが、抵当権の設定をする場合には許可は不要です。
法第3条第1項又は第5条第1項の許可が必要な農地の売買について、これらの許可を受けずに売買契約を締結しても、その所有権は移転しない。
農地法第3条第1項又は第5条第1項の許可が必要な農地の売買について、これらの許可を受けずにした売買契約は、無効です。
農地法3条の許可を受けないで農地を売った場合、契約は無効になり、罰則も適用されます。
ただし、許可がいらない例外もあります。そのひとつが相続、遺産分割、財産分与、包括遺贈、相続人への特定遺贈の場合で、これらの場合は許可は不要です。しかし、相続人などに農地等を適正に使ってもらう必要はありますので、農地を取得した旨の農業委員会への届け出は必要になります。
農地法4条許可(転用)
転用とは、農地の用途を変えること、つまり、農地を農地以外の土地にすることをいいます。
例えば、長年農家を営んでいたAさんが農家を引退し、所有する農地を農地以外の土地に変えるような場合がこの転用にあたります。
農地を転用をすると、農地がなくなってしまいますので、日本の農業生産力の観点から非常に重大な変更であるので、許可を受ける必要があります(4条許可)。また、ことがらの重大性から、農業委員会ではなく、都道府県知事の許可が必要なのが原則です。
農業者が相続により取得した市街化調整区域内の農地を自己の住宅用地として転用する場合でも、法第4条第1項の許可を受ける必要がある。
農業者が、市街化調整区域内の農地を自己の住宅用地として転用する場合、4条許可が必要である(4条1項)。相続により取得した場合、3条は許可不要のケースに該当するが、4条は該当しない。
難しく書いてある問題ですが、端的に言えば「転用に4条許可が必要であるか」を問う問題です。転用をするのですから、当然、4条許可は必要です。
農地法4条の許可を受けないで農地を転用した場合、原状回復や工事停止等の措置がとられることがあります。また、罰則も適用されます。
農地法5条許可(転用目的権利移動)
農地を農地以外のものに転用するため、所有権の移転等をする場合に5条許可が必要になります(3条許可と4条許可ではありません)。
たとえば、Aさんの農地をBさんに売り、Bさんはそれを宅地として使うような場合です。農地を使う人が変わるとともに、農地の用途も変わります。転用する目的で権利が移動することから、転用目的権利移動と呼ばれています。
宅地に転用する目的で市街化区域外の農地を購入する場合は、農地の権利移動に係る法第3条第1項の許可のほか、農地転用に係る法第4条第1項の都道府県知事の許可を受ける必要がある。
5条1項の許可が必要である。農地を転用するための権利移動であるから、5条1項の許可が必要である(5条1項)。
また、数ヶ月など一時的な使用であっても、あとで復元して返還する約束であっても許可が必要になります。
建設業者が、農地に復元して返還する条件で、市街化調整区域内の農地を一時的に資材置場として借りる場合は、法第5条第1項の許可を受ける必要がある。
一時的であろうと本肢の行為は「転用を目的とした権利移動」であることには変わりがない。したがって、5条1項の許可を受ける必要がある(5条1項)。
農地法5条の許可を受けないで農地を譲渡した場合、契約は無効になり、罰則も適用されます。そして、4条と同様、原状回復や工事停止等の措置がとられることがあります。
以上、これくらい覚えておけば1点UPは確実です。