民法 - 代理(4)無権代理の相手方の保護【5分で1点UP】

前回の記事に引き続き、無権代理の論点を取り扱います。無権代理の論点は少々複雑ですが、余計なことをした無権代理人がいて、本人の保護と相手方の保護をどう調整していくのかをそれぞれの立場に立って考えてみると理解しやすく、頭にも残りやすいと思います。

無権代理の相手方の催告権と取消権

過去問(H16-2-2改)

B所有の土地をAがBの代理人として、Cとの間で売買契約を締結した。Aが無権代理人である場合、CはBに対して相当の期間を定めて、その期間内に追認するか否かを催告することができ、Bが期間内に確答をしない場合には、追認とみなされ本件売買契約は有効となる。

答え:宅建過去問答え
無権代理行為の相手方は、相当の期間を定めて、本人に対して追認するか否かを確答するよう催告することができ、その期間内に確答がないときは、追認拒絶したものとみなされます。本問の場合、「追認」ではなく、「追認拒絶」とみなされます。

無権代理人

前回の事例を使って説明をしていきましょう。Aの友人のBが、頼まれてもいないのに勝手にAの代理人を名乗り、Cから100万円の壺を買う約束をしてきました。

Cさんの立場になって考えてみましょう。Cさんは、「Aさんに壷が売れた!」と思っていたのに、この売買契約はBの無権代理行為でした。無権代理行為は、Aさんの追認がないかぎり効果は生じないのですから、Cさんは不安定な立場におかれています。

このCさんを保護するための制度の一つとして催告権があります。Cさんとしては、「この話、追認してくださいよ。」と相当な期間を定めて、Aさんに催告をすることができます(Cが無権代理について善意か悪意かを問わない)。

無権代理催告権

今度は、催告をされたAさんの立場で考えてみましょう。相手方Cさんに催告されたら、Aさんは返事をする義務があるのでしょうか。もし、返事をしなかったら、契約が有効になり、壺の代金を支払わなければならなくなるのでしょうか…。

民法は、本人が催告に対して何も返事をしなかった場合は、追認を拒絶したものとみなすと規定しています(民法114条)。そもそも余計なことをしたのはBなのですから、返事をしなかっただけでAさんに不利益が及ぶことはありません。契約は効力を生じないままです。

また、相手方Cは、無権代理であることを知らなければ、契約を取り消すこともできます(この取消権善意の場合のみ行使できます)。

相手方の無権代理人への責任追及

過去問(H18-2-4改)

AはBの代理人として、B所有の甲土地をCに売り渡す売買契約をCと締結した。しかし、Aは甲土地を売り渡す代理権は有していなかった。Bが本件売買契約を追認しない場合、Aは、Cの選択に従い、Cに対して契約履行又は損害賠償の責任を負う。ただし、Cが契約の時において、Aに甲土地を売り渡す具体的な代理権はないことを知っていた場合は責任を負わない。

答え:宅建過去問答え
本人が追認をしない場合、相手方は無権代理人に対して責任追及ができ、無権代理人は相手方の選択により、履行又は損害賠償義務を負います。相手方がこの責任追及権を行使するためには善意無過失であることが必要です。本問では、相手方Cが悪意(甲土地を売り渡す具体的な代理権はないことを知っていた)であるので無権代理人Aは責任を負いません。

責任追求

また、無権代理人と契約をしたCさんは、本人の追認がない間、無権代理人Bに契約の履行または損害賠償のいずれかを選択して責任追及することができます。

契約がBの無権代理行為だということをCさんが知っていた場合や過失がある場合にも責任追及を認めるのはCさんを保護しすぎですし、Aさんの追認を得られれば当初の契約が有効になるので責任追及を認める必要はありません。責任追及ができるのは、Cさんが善意無過失であり、本人の追認を得ることができない場合に限ります。

まだある!相手方Cさんを保護する制度