民法 - 代理(5)表見代理【5分で1点UP】

前回の記事に引き続き、無権代理の相手方の保護の制度を説明してきます。今回は、表見代理について説明します。

表見代理とは?

簡単にいうと表見代理とは、無権代理が有効な代理行為のように見えるときで、一定の要件を満たすときは相手方が無権代理行為を有効だと主張することができる制度です。

表見代理が成立するのは相手方が善意無過失であり、代理権があると信ずべき正当な理由があるとき、つまり、本人に責任を負わされてもやむを得ないと認められる場合(本人の落ち度がある場合)に限られます。

過去問(H18-2-2改)

BがAに対し、甲土地に抵当権を設定する代理権を与えているが、Aの売買契約締結行為は権限外の行為となる場合、甲土地を売り渡す具体的な代理権がAにあるとCが信ずべき正当な理由があるときは、BC間の本件売買契約は有効となる。

答え:宅建過去問答え
代理人が与えられた代理権の範囲を超えて取引をしてしまったケースなので、Aに売却についての代理権があるとCが信ずべき正当な理由がある場合には、表見代理が成立し、BC間の売買契約は有効になります。

表見代理は、本人の落ち度の種類に応じて3つの類型が認められています。これらの類型にあてはまり、相手方が善意無過失であればいずれも表見代理が成立し、契約は有効となります。

では、その類型をひとつずつ見ていきましょう。

代理権授与表示による表見代理

この類型は、代理権を与えていないのに、代理権を与えたように見える状態を本人が作り出したケースです。

表見代理

例えば、Aが、Bに代理権を与えていないにもかかわらず、「Bが土地の売却に関する代理人である。」と表示し、そのBがCさんと土地の売買契約をしてしまったような場合です。

Cさんは、Aのまぎらわしい行動(代理人であるとの表示)を信用して契約をしたのであり、Aには代理権を与えたように見える状態を作り出した落ち度があるといえます。

この場合、Cさんが善意無過失であれば、表見代理を主張して契約を有効にすることができます。

代理権外の行為の表見代理

この類型は、代理人が与えられた代理権の範囲を超えて取引をしてしまったケースです。

表見代理

例えば、Aさんが所有するマンションを賃貸する代理権を与えられたBが、与えられた権限を超えてそのマンションをCさんに売却してしまったような場合や、抵当権設定の代理権しか与えられていない代理人が売買契約を結んでしまったような場合がこの類型にあてはまります。

この場合は、勝手にそんな不誠実なことをするような人を代理人として選任した本人に落ち度があると考え、本人より相手方を保護します。

この場合も相手方が善意無過失であれば、表見代理を主張して契約を有効にすることができます。

代理権消滅後の表見代理

この類型は、かつて代理権があった者が代理人でなくなった後も代理人と称して取引をしてしまったケースです。

以前、代理権があった者に今も代理権があると考えるのは、通常ありえることです。この場合、代理人の代理権が消滅したことを相手方に通知することを怠っているような事情があれば、それは本人の落ち度といえます。

この場合も代理権が消滅していることに善意無過失であれば、表見代理を主張して契約を有効にすることができます。