平成26年度宅建試験直前出題予想⑤(民法等・補足)

平成26年度(2014年度)宅建試験直前出題予想の第5回目です。今回は、内容的に少し物足りなかった前回の民法等の出題予想の記事を補足する形で、予想論点の紹介と優先的に確認してほしい部分の指摘をしていきたいと思います。

ただ、民法等という科目は、超直前期に新しい知識を詰め込んでも点数に結びつきにくい科目であるので、ここで紹介した論点は確認する程度でよいでしょう。深入りは禁物です。

民法等からの出題予想と得点目標

例年、民法等からは14問出題されており、民法10問、借地借家法2問、区分所有法1問、不動産登記法1問という内訳で出題されています。目標は、14問中9問の正答です。

それでは、予想論点を超直前期に効く肢とともに指摘していきます。

売主の担保責任等

売主の担保責任は、頻出分野であるにもかかわらず、昨年は肢のひとつでしか出題されませんでした。今年は、全部他人物売買を中心とした出題がされるのではないかと予想しています。

全部他人物売買は、所有者が当初からこの土地を売却する意思がなかったとしても有効です(H21)。他人物売買につき、買主が善意であれば契約の解除と損害賠償請求ができ、悪意である場合には契約の解除だけすることができます(H17)。

宅建業法で『他人物売買』というキーワードが出てくる場面も確認しておきましょう。原則、宅建業者が他人物売買をすることは禁止されていますが、宅建業者が不動産を取得することが確実な場合であれば、他人物売買契約をすることができます。これは、宅建業者が自ら売主となって不動産を売却する場合に受ける8種規制のひとつです。

代理

代理は、前回の記事を参照してください。

時効

時効は、平成22年以来、真正面から出題されていません。出題間隔からすると、そろそろ真正面から問われてもおかしくないと思います。

基本事項をおさらいしておきましょう。時効の完成前には、時効の利益を放棄できないとされていますので、時効完成前になされた時効の利益を放棄する旨の特約は無効です(H21)。また、消滅時効完成後に、債務者が債務の承認をした場合、債務者は、時効完成の事実を知らなかったときでも、信義側上、消滅時効を援用することは許されないとされています(H17,21)。

債権譲渡

債権譲渡は、3、4年に一度出題されるテーマです。最後の出題は平成23年なので、今年出題される可能性は高いといえます。

基本事項を確認しましょう。将来の債権でも、発生原因を特定できれば譲渡することができます(H19)。譲渡禁止特約に反して譲渡したとしても、善意無重過失の譲受人に対しては、譲渡の無効を対抗することはできません(H23)。

連帯債務

連帯債務は、4年に1回の出題ペースで出題されていましたが、平成20年以来出題されていません。平成24年にも平成25年にも出題されていませんので、出題間隔からすると出題される可能性はかなり高いことになります。

連帯債務では請求と承認の違いに注意してください。連帯債務者の一人に対する請求は他の連帯債務者にも効力を及ぼしますが、連帯債務者の一人がした債務の承認は他の連帯債務者に影響を及ぼしません(H20)。

不法行為

不法行為も頻出事項です。昨年、使用者責任が出題されたので、今年は、工作物責任から出題されると予想しています。

土地の工作物の設置・保存の瑕疵から損害が生じたときは、第一次的に、その工作物である建物の占有者が責任を負い、占有者が必要な注意を払っていた場合には占有者は責任を負わず、第二次的に所有者が責任を負います。この所有者の責任は、無過失責任です(H17)。

対抗問題

対抗問題は、頻出分野であるにもかかわらず、昨年出題されなかったので、注意が必要です。どのような場合に登記で決着をつけ、結論はどうなるのかを過去問で確認しておきましょう。解除と登記(H16,19,20)、取消しと登記(H19,22,23)、時効と登記(H19,22,24)が特に重要です。

担保物権

担保物権からは毎年1~3問出題されますが、今年は法定地上権が出題されると予想しています。原則として、「抵当権設定当時に土地の上に建物が存在し、その土地と建物が同一の所有者であること」という要件にあてはまれば、法定地上権は成立します(H21)。

そして、同一の所有者かどうかは、登記ではなく、実際の権利関係で判断します(H21)。これで、法定地上権の成否を問う問題は、ほぼ攻略できるはずです。形式的に当てはめて判断すればよいでしょう。

相続

今年は特に、相続の承認・放棄や遺留分に注意しましょう。定番のひっかけですが、兄弟姉妹に遺留分はありません(H18,24)。ひっかからないようにしましょう。また、相続開始前に相続放棄はできませんが、遺留分の放棄は相続開始前であっても家庭裁判所の許可を受ければすることができます(H20)。

借地借家法

借地借家法は2問出題されます。借地借家法の目的は、借り手の保護です。正誤の判断に困った時は、この観点から考えて答えを出すようにしましょう。

借家からは、定期建物賃貸借が出題されると予想しています。定期建物賃貸借は、期間の定めを設け(1年未満の期間でも可)、公正証書等書面で設定契約をする必要があります。書面であればよく、公正証書でなくてもかまいません(H18,19)。また、契約の更新がないことにつき、書面を交付して説明しなければなりません。この書面による説明がないときは、更新のある普通借家契約となりますが、契約全体が無効となるわけではありません(H20,24)。

不動産登記法

このテーマは、範囲が広い、内容も難しい、未出の問題が出題されることが多い…と手堅く得点できるテーマではありません。ただ、登記手続の原則と例外は、よく出題されている部分です。表示に関する登記を除き、登記申請は共同申請が原則ですが、偽りの登記をされるおそれがない場合(登記手続きをすべきことを命ずる確定判決による登記、相続による権利の移転登記など)には、例外として単独で登記申請ができます(H17)。ここは過去問知識だけで対策は十分です。

区分所有法

区分所有法は、範囲が広く、応用問題も多く出題されているので、超短期間や一夜漬けで得点するのは難しいテーマです。基本は、集会の召集手続、規約の効力と閲覧方法、共用部分の管理の3つです。知識が曖昧な方は、この3つを確認しておきましょう。ここも過去問に出題された知識だけで十分です。

管理人の予想と管理人コメント

駆け足で紹介しましたが、これらの知識は確認するだけで十分です。この時期に民法等の新しい知識の詰め込みはする必要がありません。

試験まで残り数日、最後のひと踏ん張りです。時間がある限り、本試験でケアレスミスをしないようにするための準備をしましょう。くれぐれも身体には気をつけてください。みなさまが、ベストコンディションで受験できることを願っております。