平成28年度宅地建物取引士試験 講評

全体

昨年度と異なり、シンプルな問題が多く見受けられたため、合格点の上昇が見込まれます。特に、民法等においては、例年他科目よりも難易度が高めに設定されている印象がありましたが、今年は難問・奇問の出題が少なく、他科目と足並みが揃ってきたように思われます。また、昨年度と比較して個数問題の数が減ったため、その点からも全体の合格点の上昇が予想されます。

民法等

全体として、基本的知識で正解できる問題でした。
 また、昨年度同様、単純正誤13問、個数問題1問でした。もっとも、昨年度は賃貸借と使用貸借(第3問)、定期借家契約と普通借家契約(第12問)を比較する問題や、抵当権の譲渡・放棄がされた場合の配当額を計算する問題(第7問)が出題されましたが、今年はそのような比較問題、計算問題はありませんでしたので、形式面でも解きやすかったと思われます。
したがって、言い回しや事実関係等問題文を正確に把握して解答できれば、9問前後の高得点が見込めると思われます。

法令上の制限

 出題の順番は変更したものの昨年度と同様、都市計画法・建築基準法から各2問、国土利用計画法・宅地造成等規制法・土地区画整理法・農地法から各1問の出題でした。難易度も基本事項を聞いているものが多く、昨年度とほぼ変わらないかやや平易化したと思われます。
 ただし、問17の肢2は、都市計画区域の指定と混同しやすく間違えてしまったかもしれませんし、問19は、肢1を正解肢に選んでしまった受験生も多かったのではないかと推察されます。他の問題はそれ程難易度が高くなかったことを考慮すると、法令上の制限の分野では、6問ないし5問はとりたかったところです。

宅建業法

今年の試験は、基礎的な知識を問う問題が多くを占めたため、昨年度よりも難易度は下がり得点しやすい問題が多かったと思います。
多くの受験生が苦手とする個数問題は、昨年度(8問)に比べ、5問と数は減りましたが、問題の難易度は横ばい傾向であったため落としてしまうところも多かったと思われます。特に問36を本番で「全て正しい」と判断するのはなかなか難しかったかもしれません。
宅建業法においては、報酬額の計算が出題されなかったことや、個数問題が減ったこともあり、16問は正解しておきたいところになります。

その他関連知識

問23~25は昨年度より平易な内容となりました。特に印紙税、不動産取得税の2問は確実に正解しておきたい問題になります。しかし、不動産鑑定評価は出題が予想されていただけに難しい内容となっていました。
登録講習修了者の5問免除に対応する問題は、問46(住宅金融支援機構)は、昨年度と比べるとやや難化傾向となり細かな論点が出題されましたが、問47以降については今まで培ってきた法的センスと一般常識で対応できるものであったと思います。
よって、その他関連知識をトータルで評価すると、昨年度同様か平易化されたと判断できるため、6問前後は正解できるレベルであったと思われます。